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中川 直樹<Nakagawa, Naoki>

国立遺伝学研究所 神経回路構築研究室 助教

経 歴

京都大学医学部 人間健康科学科(2005-2009)

 京都大学では、医学部人間健康科学科の検査技術科学コースに在学。学部の授業で基礎から臨床まで幅広く医学の知識を学んだことが、研究の道を志す最初のきっかけになった。大学4回生時の卒業研究で岡昌吾教授の研究室に所属し、先天性筋ジストロフィーの原因となる接着分子ジストログリカンの糖鎖修飾についての研究を始める。研究テーマは半分も理解していなかったが、初めての生化学・分子生物学実験がとても面白く、そのまま大学院への進学を決めた。

 

京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻(2009-2015)

 大学院時代、引き続き岡教授の研究室でジストログリカン糖鎖修飾の研究に従事する。糖鎖がひとつ有るか無いかでタンパク質の機能が大きく変化すること、糖鎖修飾がうまく行かないと疾患の発症にまでつながり得ることなど、細胞が機能を維持する仕組みの精巧さに感銘を受けた。
 博士課程の後半からは、先天性筋ジストロフィーのモデルマウスを用いて、本疾患の合併症である大脳皮質形成異常(II型滑脳症)の病態発症メカニズムの解析を行う。ジストログリカンは骨格筋以外に脳にも強く発現しており、胎生期の大脳皮質では主にRadial Glia細胞(神経幹細胞の一種)に発現する。筋ジストロフィー症では、ジストログリカンの機能不全によってRadial Glia細胞の形態に異常が生じ、神経細胞移動と大脳皮質層構造の異常を引き起こす。この研究から、細胞同士の連携プレーによる複雑な脳の形成過程に強く興味をもった。
幸いなことに大学院ではジストログリカンの糖鎖修飾機構の一端や、大脳皮質形成における役割を明らかにすることができた(JBC 2012; Glycobiology 2013; Sci. Rep. 2013, 2015)。生物学研究の面白さが段々とわかり始め、本格的に研究者の道を進みたいと考えるようになった。

 

米国ノースカロライナ大学(2015-2018)

大学院時代に出会ったRadial Glia細胞の形態の美しさへの興味から、その特徴的な形態を支える分子機構や、大脳皮質形成における生物学的意義について研究がしたいと思い、Radial Glia細胞の専門家である米国ノースカロライナ大学Eva Anton教授の研究室に博士研究員として留学した。
 留学先ではRadial Glia細胞の形態・機能を制御する分子メカニズムについて、細胞内シグナル伝達や微小管ダイナミクスといった観点から研究を行う。神経発生研究は、それまでの生化学中心の実験スタイルからは大きな変化であり不安もあったが、研究棟の周囲は見渡す限り森、という恵まれた(?)環境の中、マウス遺伝学、組織学、ライブセルイメージングなど新しい実験手法を身に着けることができ、Radial Glia細胞の発生におけるWntシグナルの重要性について論文を発表することができた(Genes Dev. 2017)。

 

国立遺伝学研究所(2018-現在)

3年半の留学生活を終え、2018年9月より国立遺伝学研究所の岩里琢治教授の研究室に助教として参加。これまでは胎児期における「脳のでき方」を研究してきたが、その中で、でき上がった脳がどのような発達を遂げ高度な脳機能を獲得するのか、その発達メカニズムに興味が出てきた。岩里研ではこの疑問について、新生児期のマウス体性感覚野における神経回路再編機構をモデルとして研究を行いたいと考えている。二光子励起顕微鏡を用いた生体イメージングを駆使して、生きたマウス脳内で実際に起きている神経細胞の動態変化を直接観察することで、私たちの脳が発達を遂げ機能を獲得していく仕組みを紐解いていきたい。

研究業績

原著論文

1. Naoki Nakagawa*, Jingjun Li*, Keiko Yabuno-Nakagawa, Tae-Yeon Eom, Martis Cowles, Tavien Mapp, Robin Taylor, ES. Anton. (*equal contribution)
APC sets the Wnt tone necessary for cerebral cortical progenitor development.
Genes Dev. (2017) 31, 1679-1692. doi: 10.1101/gad.302679.117.

2. Naoki Nakagawa, Hirokazu Yagi, Koichi Kato, Hiromu Takematsu, Shogo Oka.
Ectopic clustering of Cajal-Retzius and subplate cells is an initial pathological feature in Pomgnt2-knockout mice, a model of dystroglycanopathy.
Scientific Reports (2015) 5:11163. doi: 10.1038/srep11163.

3. Hirokazu Yagi*, Naoki Nakagawa*, Takuya Saito, Hiroshi Kiyonari, Takaya Abe, Tatsushi Toda, Sz-Wei Wu, Kay-Hooi Khoo, Shogo Oka, Koichi Kato. (*equal contribution)
AGO61-dependent GlcNAc modification primes the formation of functional glycans on α-dystroglycan.
Scientific Reports (2013) 3, 3288. doi: 10.1038/ srep03288

4. Naoki Nakagawa, Hiromu Takematsu, Shogo Oka.
HNK-1 sulfotransferase-dependent sulfation regulating laminin-binding glycans occurs in the post-phosphoryl moiety on α-dystroglycan.
Glycobiology (2013) 23, 1066-1074. doi: 10.1093/glycob/cwt043.

5. Naoki Nakagawa, Hiroshi Manya, Tatsushi Toda, Tamao Endo, Shogo Oka.
Human natural killer-1 sulfotransferase (HNK-1ST)-induced sulfate transfer regulates laminin-binding glycans on α-dystroglycan.
J. Biol. Chem. (2012) 287, 30823-30832. doi: 10.1074/jbc.M112.363036.

6. Naoki Nakagawa, Tomomi Izumikawa, Hiroshi Kitagawa, Shogo Oka.
Sulfation of glucuronic acid in the linkage tetrasaccharide by HNK-1 sulfotransferase is an inhibitory signal for the expression of a chondroitin sulfate chain on thrombomodulin.
Biochem. Biophys. Res. Commun. (2011) 415; 109-113. doi: 10.1016/j.bbrc.2011.10.023.

 

奨学金等

2018.4-2018.8 早石修記念海外留学助成 (PI: Eva Anton)
2017.4-2018.3 上原記念生命科学財団リサーチフェローシップ (PI: Eva Anton)
2015.4-2017.3 日本学術振興会海外特別研究員(PI: Eva Anton)
2013.4-2015.3 日本学術振興会特別研究員(PI: 岡 昌吾)